-R5- アルコウ

20代コピーライターの視点から世の中を見たとき。

なくした時計



初めてもらった時計だった。
一緒に探して、一目惚れして、何店舗も回って見つけた時計だった。

でも、なくした時計だった。
すごくお気に入りで、毎日つけていたのに、
なくしてしまった。

あのときの彼女の表情は、とても怒っていて、
とても悲しそうで、とても寂しそうだった。

それでも僕は、その事実が恥ずかしくて、
なくしてしまった事実が、大切に出来なかった自分が、
彼女にそんな表情をさせてしまったことが恥ずかしくて、
笑ってごまかしてしまった。

そんな生き方をずっとしてきてしまった。
なくした時計は、今なら買える。
当時よりももっと安い金額で買える。
同じ時計を、身につけることは出来る。

でも、あのときもらった時計は、
もう二度と手に入らない。

たとえ、当時なくしてしまった時計と全く同じシリアルナンバーのものが、
巡り巡ってどこかの中古時計ショップで見つけられたとしても、
そしてそれを購入したとしても、僕が身につけるその時計は彼女からもらった時計じゃない。

思い出とは、そういうことだと思う。
時計をなくして、僕は今日までにいろいろとなくしてきてしまった。
でも、やっぱり思い出すのは、
このときなくしたこの時計だ。

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